DATE : 2007 / 10 / 24 ( Wed )
【作品概要】
著者:沙村広明
出版社:講談社
ジャンル:コメディ
全1巻(初版発行2002年)
『無限の住人』の沙村広明氏の短編作品集。
『アフタヌーン・シーズン増刊』に「竹易てあし」名義で掲載された『おひっこし』『少女漫画家無宿 涙のランチョン日記』『みどろヶ池に修羅を見た』の3編を収録。
【あらすじ】(ネタバレ無し)
『おひっこし』
笑えるので雑誌掲載時に使用したと思われる「次号予告」(単行本『おひっこし』第一話の後に収録)から抜粋。
「八王子から橋本とかだいたいあの辺を舞台に繰り広げられる、懐かしくてちょっぴり切なくて心底どうでもいい若者の群像を4回ぐらいに分けてお届けします」
「愛とか恋とかのオ・ハ・ナ・シ」
です。w
『少女漫画家無宿 涙のランチョン日記』
船橋夏見(18)は少女漫画誌で連載を持つ少女漫画家。
しかし、編集者とのやりとりから路線変更をした結果、連載は打ち切られアパートまで追い出されてしまう。
その日を境に夏見の波乱万丈な人生が始まるのだった……。
『みどろヶ池に修羅を見た』
「京都スーパー飲みある記」という副題が付いていますw。
沙村広明氏が編集I上氏に騙されて滞在することになった京都での2日間が描かれている8ページの短編。
【感想&雑記】(ネタバレ無し)
『涙チョン』も面白いんですけど、やはり『おひっこし』です!
ブッとびましたねw。
元々『無限の住人』の「絵」「軽妙な会話」「間」「ユーモアのセンス」がツボで、間違いは無いだろうと思っていましたが。
コメディを本気で描いている訳ですからたまりません。w
特に30代半ばの人間にはメガヒットする小ネタのオンパレードではないでしょうか。
さらに物語の舞台や登場人物たちが、個人的な思い入れをよりいっそう強くしてくれちゃいました。
舞台は恐らく「多摩美」。
多摩美OBのあつまりに当然のように顔を出していた時期がありまして空気とかそのまんまなんですよ。
その中の憧れの誰かさんが作中の誰かさんにちょっと似ていたりして……。www
もう手放せません。
独断による名作度 | :90/100点 |
ほんわか度数 | : ★★☆☆☆ |
心あったか度数 | : ★★☆☆☆ |
コミカル度数 | : ★★★★★ |
笑っちゃう度数 | : ★★★★★ |
泣けちゃう度数 | : ☆☆☆☆☆ |
設定・世界観 | : ★★☆☆☆ |
テンポ・スピード感 | : ☆☆☆☆☆ |
残虐描写度数 | : ☆☆☆☆☆ |
DATE : 2007 / 10 / 16 ( Tue )
【作品概要】
著者:あずまきよひこ
出版社:メディアワークス
ジャンル:コメディ
1巻(初版発行2003年)~7巻(初版発行2007年) 以下続刊。
『月刊コミック電撃大王』(メディアワークス)に2003年3月から連載中。
『あずまんが大王』で知られる、あずまきよひこ氏のコメディ作品。
2007年10月現在で、累計450万部を突破している人気作品。
2006年「日本のメディア芸術100選」に選出。
2006年文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞受賞
【あらすじ】(ネタバレ無し)
とにかく元気で、どんなことでも楽しめる!
ちょっと変わった5歳の女の子「よつば」と「とーちゃん」がとある町に引っ越してきた !
よつば、とーちゃん、「お隣さん」の綾瀬家を中心に、さりげない日常が丁寧に描かれる作品。
【感想&雑記】(ネタバレ無し)
「ゆっくりと丁寧に」描いていく。
と公言されている通り、非常に微細な書込みと作品のゆったりした雰囲気はどこかノスタルジックな雰囲気がただよってます。(^^)
最大の特徴は、「悪意」というものが作品中に全く存在しない。ということでしょうかw。「泣ける話」は全くないのですが、暖かい気持ちがじんわりと心に広がります。
好きな表現ではありませんが、「癒し系」という表現がぴったりかも……(^^;)。肩の力を抜きたい時に読むと、いい感じで脱力できてますよー!
独断による名作度 | :90/100点 |
ほんわか度数 | : ★★★★★ |
心あったか度数 | : ★★★★★ |
コミカル度数 | : ★★★★★ |
笑っちゃう度数 | : ★★★★☆ |
泣けちゃう度数 | : ☆☆☆☆☆ |
設定・世界観 | : ★★★★★ |
テンポ・スピード感 | : ☆☆☆☆☆ |
残虐描写度数 | : ☆☆☆☆☆ |
DATE : 2007 / 10 / 14 ( Sun )
【作品概要】
著者:幸村誠
出版社:講談社
ジャンル:SF
1巻(初版発行2001年)~12巻(初版発行2004年) 全4巻。
『週刊モーニング』(講談社)に1999年から不定期連載。
幸村誠氏のデビュー作。
2002年に星雲賞コミック部門を受賞したSF作品。
【あらすじ】(ネタバレ無し)
舞台は2070年代。
宇宙開発が進み、軌道上のゴミ「スペース・デブリ」が大きな問題となっている時代のお話。
「ハチマキ」こと星野八郎太は、デブリ回収業者として宇宙船DS-12号、通称「トイボックス」で「フィー」「ユーリ」と共にデブリを回収する毎日を送っていた……。
【感想&雑記】(ネタバレ無し)
最近、一番お気に入りの作品です。
何度も読み返してます。
現在の社会(人間)が抱える問題、人が生きていく上での日々の葛藤や成長、そして「愛」といったテーマが描かれています。
取り扱うテーマはともすると「重さ」を伴うものですが、変な重苦しさは微塵も無く、爽やかな読後感と共にほんの少し自分の人生について考えるきっかけをくれる素敵な作品です。
物語のメインとなるのは主人公「ハチマキ」の葛藤と成長です。
夢を持ちながらも日常に流されている時期、何かを失ってでも夢をかなえようとがむしゃらに邁進する時期、何もかもから執着を失ってしまう時期……。
その他にも、登場人物の多くの人達の立場や思い、それぞれの人々の葛藤している姿も描かれています。
群像劇形式で描かれており、変化しない一人の人物の視点ではないので、いつ読んでも(読む人の意識が変化しても)、誰が読んでも、必ずどこかで感じることがあるはずです。(男性に限る。かも…)
全4巻というボリュームながら、この内容っていうのはちょっとすごいですね。宮沢賢治の引用が多いのも特徴で、心に響いてきます。とにかく濃い作品ですよ。オススメです!!
独断による名作度 | :96/100点 |
ほんわか度数 | : ★★★☆☆ |
心あったか度数 | : ★★★★☆ |
コミカル度数 | : ★★★☆☆ |
笑っちゃう度数 | : ★★☆☆☆ |
泣けちゃう度数 | : ★★☆☆☆ |
設定・世界観 | : ★★★★★ |
テンポ・スピード感 | : ★★★☆☆ |
残虐描写度数 | : ☆☆☆☆☆ |
DATE : 2007 / 10 / 06 ( Sat )
【作品概要】
著者:永野護
出版社:角川書店
ジャンル:SF
1巻(初版発行1987年)~12巻(初版発行2006年) 以下続刊。
アニメ情報誌『月刊 New Type』1986年4月号より不定期連載。
メカニックデザイナー永野護氏が、アニメ作品『重戦機エルガイム』のメカデザインを担当する際に構築した膨大な裏設定を再構築して描かれたSF作品。(以下 『F.S.S』)
*当ブログではSF、ロボットアクション、ファンタジー作品としてカテゴライズしていますが、単行本1巻の著者インタビューで「これはお伽話です」と公言されています。
【あらすじ】(ネタバレ無し)
舞台は4つの太陽系と1つの移動太陽系を含んだ「ジョーカー太陽星団」。移動太陽系を除く4つの太陽系に属するの多くの惑星にはそれぞれ大小様々な国家が存在しており、文明が緩やかに衰退し、資源が少しづつ枯渇し、寿命を迎える惑星が出てきている時代のお話。
この世界でも、国家間の対立、地域紛争は絶えず、戦争が日常的に行われています。ただ、この世界の戦闘において優劣を最終的に決定するのは、最強の兵器「モーターヘッド(MH)」と呼ばれるロボット、それを駆る事が可能な特異な身体能力と神経反射速度を有する「騎士(ヘッドライナー)」という称号を持つ人々、モーターヘッドのコントロールをサポートするために人間によって作り出された有機コンピュータ、「人工生命体ファティマ」なのです。
ゆえに国家は通常の軍隊の他に「騎士団」を抱え、手練の騎士を筆頭騎士や指南役として招き入れたり、高名なMHマイト(MH設計者のこと。やはり非常に数が少ない)が制作したMHを導入したり、大国では自国でMHを開発していたりします。
この物語はそんな世界で、主に騎士やファティマにスポットを当てながら、長い長い星団の歴史(時に星団外の世界も)を、主人公「光の神アマテラス」を中心に描いていくお伽話です。
【感想&雑記】 (ネタバレ無し)
特筆すべきは、デザイナー永野護氏の独自の感性と設定の詳細さですねー。
作中に登場する兵器「モーターヘッド(MH)」は圧巻です。
初めて見たときは本当に痺れました。「この人、天才や…」と思わざるを得ません。
あまりに個性が強すぎて、アニメ作品のメカデザインに抜擢されては、途中で降板したりと、なかなか仕事では苦労されているようですが、ガンダムの世界を大きく変えたムーバブルフレーム(外部リンク)と全天周囲モニター(外部リンク)は氏の功績として評価されており、永野氏のデザイナーとしての特徴を良く表していると思われます。
永野氏がエルガイムの制作に携わっていた際、あまりに詳細、且独自の世界観を構築し、ことあるごとに監督に噛み付くので、あの富野由悠季監督が感嘆し(呆れ)て「エルガイムは君にあげる」と言った。というエピソードがあるほど。w
富野由悠季監督が度々、「永野君のようなデザイナーが…」という言葉を使われていたことがあって、「想像の世界だからこそ、ときに精密なロジックを持ち込むことも大事なんだ」と痛感させられたりしました。
ちょっと話がそれましたね(^^;)。
『F.S.S』ですが、『エルガイム』との共通点は当然多く、両作品の設定を比べながら関連を紐解くのもマニアの楽しみになっているようです。私は基本的に別作品として楽しんでいますし、エルガイムを知らなくても 『F.S.S』の世界観とモーターヘッドと呼ばれる当世界のロボットの描写には圧倒されること間違い無しです。
そんな『F.S.S』に強いて難癖をつけるとすればw、永野氏は漫画家ではなくデザイナーということ、恐らく私が死ぬまでに物語が完結することはないであろうw。という2点ですね。
絵はもちろん大好きですが、台詞とかコマ割とか構成は時々ストレスを感じることがありますw。作品執筆のスピードに関しては、これだけの濃い内容に、この作画ですから当然納得はしています。とにかく些細なことはどうでもいいと思えるほど魅力の方が大きくて、私も一生をかけて楽しみたい作品の一つです。
独断による名作度
: 90/100点
ほんわか度数
: ☆☆☆☆☆
心あったか度数
: ☆☆☆☆☆
コミカル度数
: ★★☆☆☆
笑っちゃう度数
: ★☆☆☆☆
泣けちゃう度数
: ☆☆☆☆☆
設定・世界観
: ★★★★★
テンポ・スピード感
: ☆☆☆☆☆
残虐描写度数
: ★★☆☆☆
DATE : 2007 / 10 / 05 ( Fri )
【作品概要】
著者:士郎正宗
出版社:青心社
ジャンル:SF、アクション
1巻(初版発行1985年)~4巻(初版発行1989年)未完。
雑誌掲載を経ずにいきなり単行本化のため連載誌無し。
『攻殻機動隊』で一躍有名になった士郎正宗氏のデビュー作品で、根強いファンが多いSFアクション大作です。
【あらすじ】(ネタバレ無し)
舞台は攻殻機動隊と同じく第4次非核大戦後の世界。
『アップルシードDATABOOK』によると攻殻機動隊の設立が2029年。その後100年程経った2127年の世界がアップルシードの舞台となります。
第5次世界大戦相当の世界各地の武力紛争の後、「混乱した地球と人の生存」を目的に設立された総合管理局という組織が「自国の利益のみを追求する世界各国の調停、調整をするのにおおわらわ」という世界情勢の中、戦乱の跡(廃墟)を転々としながら生活する2人の主人公、デュナン・ナッツ(23歳♀)とブリアレオス(32歳♂全身サイボーグ)を「ある目的の為」にオリュンポス(*)へ入植させるところから物語は始まります。
*オリュンポス=総合管理局のある巨大な人工島。 大きさはイングランドとアイルランドを足したくらい。場所はアゾレス諸島とカナリア諸島の間くらい。
紆余曲折の後、デュナンとブリアレオスはオリュンポス内の行政院に属する内務省直属の軍特殊部隊「E.S.W.A.T」に配属され、様々な事件に対応していく事になります。
物語のカギの一つがオリュンポス(=総合管理局)で、劇中の人物の言葉を借りると、
「これだけ情報や企業が国境を越えて存在する時代に突然現れ…」
「目的は何か、いつどうやって人材を集め、秘密を守り、どこから莫大な資金、資材を得たか…」
「世界中がコケにされた」
という存在で、世界中が戦争に躍起になっている間に、有力な国家または組織の関与無しに秘密裏に建設されたことが示唆されています。
さらに総合管理局の上位に「都市企画班」、その上位に「オリオングループ」という組織があること、全てが「アポルシード計画」という計画の下に進行していること。物語の舞台が宇宙へシフトしていくことが公開されていました。
その辺りの謎解きも楽しみだったのですが、残念ながらその謎は永遠に解けないかもしれません。(T T)(後述)
【感想&雑記】 (ネタバレ無し)
記念すべき、当ブログ第一回で取り扱う「面白マンガ」は士郎正宗氏の『アップルシード』でしたー!
何故、今アップルシード!?
いや確かにおっしゃる通りなんですが(^^;)、自分が強く影響を受けた作品は数あれど、このブログを書くに当たって思い返してみると、小学生、中学生の頃に読んだ(見た)作品ていうのはやっぱり強烈なんです…。
私は中学生の頃に初めて読んで、絵の情報量の多さ、アクションの描写とスピード感に圧倒されてすっかりハマってしまいました。影響されてエアガン買ったりしたなーw
とにかく個人的にとても思い入れの強い作品です。
しかし、幸か不幸か攻殻機動隊が大ヒットしたため、圧倒的に攻殻機動隊の方が知名度が上、さらにアニメが先行してヒットしたため、原作を読んでみたけどアニメとのギャップもあってちょっと苦手!(^^;) という方が多いのも事実だったりします…。そんな方の為にちょっとエクスキューズしますが。。。
アップルシードも基本的に雰囲気は同じです。w
独特でちょっぴり難しい台詞回しや、専門用語の多さ、欄外の注は結構あります。それは士郎作品の個性なので、それがダメという人は仕方ないかもー。うーん。。。
いや、確かに「難しい」といわれるのもわかるんです。
物語の世界設定(時代背景、組織、科学技術等)で意図的に明らかにされていない部分(物語の鍵となる伏線など)とそうでない部分(物語の中でごく自然に設定として存在しているが明確な説明がない)の境目がよくわからないかも。だから読んでいて気になる人はそこで引っかかっちゃう。ということはあるとおもいます。
ただ、明確な説明が無いトコロはわからなくたっていいんです。(言い切った!w)
実際、バカな中学生(昔の自分)が読んで楽しんでたわけですから、そういう楽しみ方も全然ありじゃないですか?
ただ、わかるともっと楽しくなっちゃたりするのもまた事実なので、データブックが出たり、大人になって読み返したりしても楽しいんですね。実際いまだに新しい発見があったりしますよー。ビックリです。
そこを割り切って楽しめれば、一巻ごとのストーリーはハリウッド映画ばりのシンプル(?)なアクション物だと思うのでテンポ良く読めると思います。
キャラクターも攻殻と比べてレギュラー陣の個性が強く、数も豊富で実に魅力的な連中が目白押しです。
個人的には攻殻よりアップルに軍配です。
どっちも好きだし比べる必要は全くないんですけど。w
説明もどうも攻殻を絡めた説明になってしまうなー。(汗)
いやしかし、是非『アップルシード』も手に取ってみてください。
正直、面白いかどうかは主観的な問題なので保証はしませんが(え!?)食わず嫌いはもったいないですよ。と。w
ちなみに未完となっていますが作者が凍結宣言をしており、5巻以降は発行されない見込み(え゛ー!)です。ですが一巻ごとに完結する構成になっていますので、4巻まででも読み物としては十二分に楽しめます。
それにしてもアップルシード執筆の凍結は非常に残念!
士郎正宗氏は画集『イントロンデポ3』内で「世界情勢や自身のスタンスの変化により続きを描くのは困難」と語っているそうです(出典:Wikipedia)。確かにソビエト連邦の崩壊・東西冷戦構造の終結や、攻殻機動隊で描かれる電脳化・義体化技術⇒ヘカトンケイルシステム等と、攻殻からアップルへの技術的、又、人の種としての進化などは整合性を保つのが難しいのかと邪推しますが、本当に魅力的な作品には違いなく、続きを待ち望むファンは少なくありません。続刊を強く希望しつつこの項はここまでとします。
独断による名作度 | : 90/100点 |
ほんわか度数 | : ☆☆☆☆☆ |
心あったか度数 | : ☆☆☆☆☆ |
コミカル度数 | : ★★☆☆☆ |
笑っちゃう度数 | : ★☆☆☆☆ |
泣けちゃう度数 | : ☆☆☆☆☆ |
設定・世界観 | : ★★★★★ |
テンポ・スピード感 | : ★★★★★ |
残虐描写度数 | : ★★★☆☆ |