DATE : 2007 / 10 / 06 ( Sat )
【作品概要】
著者:永野護
出版社:角川書店
ジャンル:SF
1巻(初版発行1987年)~12巻(初版発行2006年) 以下続刊。
アニメ情報誌『月刊 New Type』1986年4月号より不定期連載。
メカニックデザイナー永野護氏が、アニメ作品『重戦機エルガイム』のメカデザインを担当する際に構築した膨大な裏設定を再構築して描かれたSF作品。(以下 『F.S.S』)
*当ブログではSF、ロボットアクション、ファンタジー作品としてカテゴライズしていますが、単行本1巻の著者インタビューで「これはお伽話です」と公言されています。
【あらすじ】(ネタバレ無し)
舞台は4つの太陽系と1つの移動太陽系を含んだ「ジョーカー太陽星団」。移動太陽系を除く4つの太陽系に属するの多くの惑星にはそれぞれ大小様々な国家が存在しており、文明が緩やかに衰退し、資源が少しづつ枯渇し、寿命を迎える惑星が出てきている時代のお話。
この世界でも、国家間の対立、地域紛争は絶えず、戦争が日常的に行われています。ただ、この世界の戦闘において優劣を最終的に決定するのは、最強の兵器「モーターヘッド(MH)」と呼ばれるロボット、それを駆る事が可能な特異な身体能力と神経反射速度を有する「騎士(ヘッドライナー)」という称号を持つ人々、モーターヘッドのコントロールをサポートするために人間によって作り出された有機コンピュータ、「人工生命体ファティマ」なのです。
ゆえに国家は通常の軍隊の他に「騎士団」を抱え、手練の騎士を筆頭騎士や指南役として招き入れたり、高名なMHマイト(MH設計者のこと。やはり非常に数が少ない)が制作したMHを導入したり、大国では自国でMHを開発していたりします。
この物語はそんな世界で、主に騎士やファティマにスポットを当てながら、長い長い星団の歴史(時に星団外の世界も)を、主人公「光の神アマテラス」を中心に描いていくお伽話です。
【感想&雑記】 (ネタバレ無し)
特筆すべきは、デザイナー永野護氏の独自の感性と設定の詳細さですねー。
作中に登場する兵器「モーターヘッド(MH)」は圧巻です。
初めて見たときは本当に痺れました。「この人、天才や…」と思わざるを得ません。
あまりに個性が強すぎて、アニメ作品のメカデザインに抜擢されては、途中で降板したりと、なかなか仕事では苦労されているようですが、ガンダムの世界を大きく変えたムーバブルフレーム(外部リンク)と全天周囲モニター(外部リンク)は氏の功績として評価されており、永野氏のデザイナーとしての特徴を良く表していると思われます。
永野氏がエルガイムの制作に携わっていた際、あまりに詳細、且独自の世界観を構築し、ことあるごとに監督に噛み付くので、あの富野由悠季監督が感嘆し(呆れ)て「エルガイムは君にあげる」と言った。というエピソードがあるほど。w
富野由悠季監督が度々、「永野君のようなデザイナーが…」という言葉を使われていたことがあって、「想像の世界だからこそ、ときに精密なロジックを持ち込むことも大事なんだ」と痛感させられたりしました。
ちょっと話がそれましたね(^^;)。
『F.S.S』ですが、『エルガイム』との共通点は当然多く、両作品の設定を比べながら関連を紐解くのもマニアの楽しみになっているようです。私は基本的に別作品として楽しんでいますし、エルガイムを知らなくても 『F.S.S』の世界観とモーターヘッドと呼ばれる当世界のロボットの描写には圧倒されること間違い無しです。
そんな『F.S.S』に強いて難癖をつけるとすればw、永野氏は漫画家ではなくデザイナーということ、恐らく私が死ぬまでに物語が完結することはないであろうw。という2点ですね。
絵はもちろん大好きですが、台詞とかコマ割とか構成は時々ストレスを感じることがありますw。作品執筆のスピードに関しては、これだけの濃い内容に、この作画ですから当然納得はしています。とにかく些細なことはどうでもいいと思えるほど魅力の方が大きくて、私も一生をかけて楽しみたい作品の一つです。
独断による名作度
: 90/100点
ほんわか度数
: ☆☆☆☆☆
心あったか度数
: ☆☆☆☆☆
コミカル度数
: ★★☆☆☆
笑っちゃう度数
: ★☆☆☆☆
泣けちゃう度数
: ☆☆☆☆☆
設定・世界観
: ★★★★★
テンポ・スピード感
: ☆☆☆☆☆
残虐描写度数
: ★★☆☆☆